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2020年頃から増えてきた平屋の住宅。1階建てであるためバリアフリーに優れ家事動線も良いと人気があります。ただし、注意して作らないとせっかくのお家が住みにくい家になってしまいます。平屋設計のポイントをお伝えします。
本当に大丈夫?オープンフロア
平屋の最大のポイントは、オープンフロアのプランにできることです。オープンフロアとは、今までは廊下などで繋がっていた各部屋を、廊下を設けず直接各部屋に行けるようになった間取りです。廊下が無いので無駄がなく、同じ面積の家を設計しても広々とした間取りになります。
オープンフロアの場合、リビングを中心に、子ども部屋と寝室に直接行けるようになります。リビングと寝室や子ども部屋が隣同士で壁とドア1枚だけの仕切りしかありません。見た目はすっきりしていてカッコ良いのですが注意が必要です。それは、音が隣の部屋に漏れやすいと言うことです。一般的に使われているドアに遮音性は期待できません。全然無いわけではありませんが、音は漏れがちです。例えば、リビングでテレビを見ていた時、部屋で勉強している子供にまでテレビの音が聞こえてしまいます。
私がリフォームした中古住宅に住んでいた頃、リビングの隣の和室に子供を寝かせていました。映画が好きなのでプロジェクターで画像を壁に映して見ていたのですが音は小さ〜くして、なんとか聞き取れる程度。自分の子供ですから嫌な気にはなりませんでしたが、不自由を感じたのは事実です。
このように音が心配な方は、防音ドアを採用すると良いでしょう。壁にも防音効果を持たせることも考えておきましょう。各自の部屋で勉強するのは中学高校と結構長いですから。
段差がないのが楽ちん!
平屋の場合、階段を上り下りする必要が無いのが一番のメリット。2階建ての場合、1階で洗濯をして濡れた重い衣類を2階に運んで干して、と言う家事動線が当たり前でした。最近の間取りでは、キッチンの近くに洗濯室があり、その隣にファミリークローゼットがあり動線も短くなっています。共働きのご夫婦が増え、家事の時間を極力減らしたいご家族には合った間取りになりやすいですね。
ただ、段差が全くないと単調になりがちです。そこでLDKには小上がりの畳コーナーなどを作ったらいかがでしょうか。それほど広くなく2畳〜3くらいでも少し横になったりできますし、子供の遊び場にもなります。小上がりなのでその段差に座ってテレビを見たり家族で話したりと楽しめます。
空間の広がりを持たせる方法
平屋を極めると、少し窮屈になってしまう事もあります。かといってそれほどの広さは必要ない。そのように思われたときには、LDKの天井を屋根に沿わせて高くしましょう。このような天井を「勾配天井」と言います。
人気の建築家「伊礼さん」は天井を極力低くして包まれた空間を感じさせてくれるのが魅力の一つですが、それだけではなくて勾配天井を設けることによりしっかりと開放感も作っています。
勾配天井で繋がった屋根裏空間を利用してロフトのように作るのも楽しいですよ。
洗濯物の簡単な干し方
家事の中で一番大変なのが洗濯と乾燥といっても過言ではないでしょう。ご家族から出た大量の洗濯物を洗濯機に押し込み、濡れて重くなった洗濯物を干して、クローゼットまで仕舞わなくてはいけません。下着のように外に干しにくい衣類も少なくありません。2階でしたらそれほど目立たない洗濯物も、1階の寝室前とかでは道路から丸見えになってしまいますね。
そのような心配の場合には洗濯物を干す部屋を考えましょう。洗濯機を置く場所も合わせて2〜3畳ほどあれば結構活躍をしてくれます。そんな狭い部屋の中に洗濯物を干して部屋がカビだらけにならないの?とご心配されるかもしれませんが、今まで建てさせていただいた方からそのようなお話はありません。実は、多くの場合洗濯室に「湿度反応換気扇」を付けています。これは、湿度が一定以上になると換気扇が動き出すという優れものです。それほど高いものではありませんので、ご検討ください。
最後の武器、洗濯も乾燥も機械に任せてしまいましょう。今は乾燥機能付きの洗濯機を利用している方も多くいらっしゃいます。しかし、高機能な乾燥機能付き洗濯機は埃が詰まったりして乾燥機能が使えなくしまうことが続出しました。そこで注目されたのが「乾太くん」です。リンナイで出しているガス式の乾燥機です。高温で乾燥させるためふっくらして匂いも付かないと評判です。価格は約30万円ほどしますが、乾燥室のように部屋を取るよりは安くなるかと思います(間取りによります)。
開放感を持たせるための中庭
平屋にすると、1階にあるすべての部屋が外から丸見え。結局カーテンが開けられない、などと言うお話を聞く事もあります。その際には中庭を考えてみてはいかがでしょうか。中庭といっても、オススメはコの字型の中庭です。コの字の空いている部分に目隠しをつけると、リビングのカーテンを閉める必要がなくなるのでより明るく感じられます。ロの字型の中庭は、湿気が溜まりやすく中庭の部分にシロアリが発生しやすいなどの問題があるのでお勧めしません。
快適な上に省エネルギー性を持たせるために
平屋の心配な事の1つに、お部屋の窓が南側に作れないことがあります。LDKと寝室くらいは南側に配置できるのですが、どうしても子供部屋とかが北側になってしまうことが多いのです。そうすると、日射取得(冬に太陽光から得られる熱)が得られず、冬の子供部屋は肌寒く感じてしまいます。窓一つで、電気ヒーター1台分くらいの熱量を得られるので、それがないのは大きいのです。
快適で光熱費のかからないお家を考えるのであれば、なるべく南側にお部屋を配置するようにしましょう。
収納はしっかりと
有名な名建築と言われる住宅と平屋住宅の共通点は、収納が少ないことが多いことです。基本的に物は置いておかないと言う方もいらっしゃるかと思いますが、捨てることが苦手な方もいらっしゃるでしょう。収納量を検討して計画をしておきましょう。
収納量の検討方法は、現在お持ちの物がスッキリと入り余裕があった方が良いですね。どのくらいの量があるのか設計される方にもお伝えしてください。
平屋の場合、屋根裏が大きく開いていることがあります。一種の小屋裏収納として利用することも可能です。この場合、2階の収納として考えられるので2階の上にある小屋裏収納とは異なり、天井高さの制限はありません。隙間は上手に利用して、後で困らないようにしておきましょう。
以前は平屋というと少し安い家のようなイメージがありました。今は全く違いますね。平屋に憧れている方が多くなりました。しかし、平屋ゆえの特性もありますので、よく理解して間取りを考えましょう。